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「『踏み出す勇気』を与える、作り手と読み手が長く繋がれる作品を作りたい」-F0.94 十二村灯・犬砂振さんインタビュー

2019年夏コミで高い評価を得た、真理を勝ち取るノベルゲーム「試製・大學奇譚」。原案から作品プロデュースまでを手掛ける十二村灯さん・シナリオを務める犬砂振さんのお二人にインタビューを行いました。




SPOTLIGHT運営 (以下SL): 本日はインタビューにお越し頂き、ありがとうございます。はじめに、読者の方に向けて活動のご紹介をいただけますでしょうか。


十二村灯さん (以下 十二村): 十二村です。本作では原案にあたるコンセプト・テーマの立案、シナリオ・音楽・イラストの全体構成、商業・宣伝両面におけるプロデューサーを務めています。本職でもアニメ作品のプロデューサーとして働いています。


犬砂振さん (以下 犬砂): シナリオを担当している犬砂です。子供のときから純文学が好きで、執筆活動自体は高校生の時からしていたのですが、同人は初挑戦です。文学の要素は残しつつ、娯楽としても楽しめるものをつくる、ということを重視して取り組んでいます。

SL: ありがとうございます。本作は「大学間の闘争」がテーマとのことですが、どういった動機や経緯で発想されたのでしょうか。


十二村: 仕事の中で商業ベースの作品を作っていることもあり、「同人でしかできないことをやりたい」と思ったことが入口です。「大学」という切り口は、擬人化や舞台設定としての活用はなされてきたものの、大学ごとの校風や専門性をストーリーの土台に据えたものはなかったと思います。商業でやろうとすると、コラボレーションが難しいテーマでもありますし。

また、Fate、艦これ、東方のような同人における人気コンテンツを見てみると、「親しみやすいキャラと深い設定」が成功要因のひとつとなっていると考えています。「大学」であればその条件も満たすことができる。同人でしかできないけれど、広がりのあるテーマなのです。


犬砂: 僕がまず連想したのが、60-70年代にかけて我が国で起きた学生運動です。学生運動は逆コースを辿る政府と、自由主義を求める学生とのイデオロギーの対立です。学生にとっては、イデオロギーが大事だった。また、大学教員の評価指標の一つが論文の数です。そこから、理論やイデオロギーが大学にとって大事なものであり、それが力となるならば、論文をポケモンバトルのように戦わせる話を書いてしまおう、と思ったのが本作の発想です。主人公は民俗学専攻なので、ニホンオオカミを召喚して戦わせるとか、そういうことを実験的にやってみましたね。


SL: 大変ワクワクするアイデアですね。本作のこだわりについてお話頂けますか?


十二村: 込めたかったのが「踏み出す勇気をあなたに」という思いです。一歩踏み出せない・決断できない閉塞感を持ちながらも、就職活動等、まさに将来に向けた分岐点に立っている若者たち。彼らが、勇気を持ってやりたいことに挑戦できる、背中を少しでも押せるような作品を作りたかった。そのような発想からも、ターゲットは就職活動を前にした学生として考えており、大学というテーマ設定も必然だったと考えています。


SL: 背中を押したい、勇気づけたい、というのがキーワードであると。


十二村: 私の思い入れが強く出ていると思います。前職では広告プランナーを務めていたのですが、当時、求人広告の仕事をしていたこともあって、「将来について選択すること」についての意識がありました。

犬砂: 「踏み出す勇気をあなたに」は一見すると綺麗なテーマです。ただ僕自身は、人が一歩を踏み出すにはある種の狂気が必要とも考えています。「清水の舞台から飛び降りる」等もそうですが、一種の爆発的な感情がないと、人間はなかなか踏み出せない。現在、体験版では4人のキャラクターを登場させていますが、今後は彼らひとりひとりの狂気と、それが爆発する瞬間について書いていきたいです。

踏み出す/抜け出すということは、現在抑圧された世界にいるということが前提でなければならないですよね。なので、「大學奇譚」の舞台設定についても、過去の論文バトルによる闘争に起因する、大学当局による抑圧社会として書き出していきたいと考えています。


あと、遊んでくれた方はわかるかもしれませんが、地の文で風景や登場人物の心の動きを伝えられるよう、非常に気を使いながら書いています。「文を目でみた瞬間、瞬時にイメージが伝わる文章」になるとよいなあと。


十二村: 難しいのが、非常に小説的なアウトプットになる点ですね。あくまで絵や音楽と合わせて楽しんでもらうコンテンツなので、犬砂が書きたい地の文章とどうしてもかち合う部分が出てきてしまう。彼の持ち味とノベルゲームとしてのテンポの良さをどう両立するか、が創作上のせめぎ合いだと思います。このあたりは同人ゲーム作りをテーマにした「冴えない彼女の育てかた」でも言及されていた点で、まさにという感じです。


SL: 活動する中で互いにリスペクトしている部分は?


犬砂: やっぱり十二村はコネだね。


十二村: スクリプト頑張って書いたとか言って欲しかった…。そして、コネはない。話戻して、犬砂振はやっぱり博識だと思います。というのも、アメコミから純文学、黒澤明からB級ホラー、MMORPGからエロゲーまで、様々なコンテンツに触れているのです。インプットが豊富になれば、アウトプットの解像度も上がるので。例えば彼の場合、「話の展開をこうしたい」という提案をした時に、「そのやり方だとこの作品と被る」みたいなのがどんどん出てくるので、私もよりクリエイティブに考えることができるし、新しさにも繋がるのかなと。


SL: ありがとうございます。サークルとしてのアウトプットは2019年の夏コミで体験版を出されたのが最初でしたっけ。


十二村: そうですね。初回参加としてはまずまずの感触でした。ネットを見る限り、評判も良かったので、まずは方向性として概ね正しい、ということを確認できたと思います。



SL: 今後の展開やビジョンについては、どんなことをお考えでしょうか。


十二村: せっかく大学というネタを選んだので、色々な広がりをもたせていきたい。そのためには、世界観やテーマ性をまず物語にきちんと落とし込みたいと考えています。当面は、登場人物の心の動きを繊細に描く方向性で、3部作くらいまでをしっかり作りきり、世界観やキャラクター性を固めたいと考えています。


犬砂: 現在、前日譚/第一話に相当する部分を作っているのですが、まずは登場人物の危うさ、狂気の種について書きたいと考えています。後は体験版冒頭で書かれている殺人事件についてきちんと解を提示したい。それが今回の位置づけです。


十二村: 後は読者と作者の関係性がより長く続くコンテンツにしたいですね。同人の楽しい部分って、見る人が限られていても、作品が長く愛されることだと思いますし。 そのために、どこまで尖ったものを作れるか、ニッチなターゲットにどこまで刺さるものを作れるかが大事だし、そこに着地させたいです。


SL: 目下のターゲットはやはり冬コミですか。

十二村: 幸い当選していたので…。ただ、本編は当初見積もったシナリオ量を大きく超えました。良い意味では犬砂の筆が乗ってくれているのですが、悪い意味では制作が間に合っていません…。そのため、完成版は来年に持ち越しつつ、冬コミでは設定に踏み込んだ小冊子を新作として頒布します。


SL: 締め切りも近づいてきましたね…。冬コミでの頒布、期待しております。


冬コミ出展情報

日程: 12/31 (火) ※4日目 スペース: 南モ33b 頒布物:試製・大學奇譚(再販ノベルゲーム)、玖珠巴のスクラップ帳(新作小冊子)


メンバー募集について】

サークルF0.94ではイラスト・シナリオ・音楽問わず、メンバーを募集しています。興味のある方は以下のアドレスまでご連絡ください。 foxy.f094@gmail.com



本日お話を伺った方: F0.94 十二村灯・犬砂振さん


Webサイト: https://foxyf094.wixsite.com/mysite

公式Twitterアカウント: https://twitter.com/f094_


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