「”やりたいことを自由にできる環境に身を置いて、後は身を任せる”ことが一番楽しい」-綺羅空心斎さんインタビュー
様々な分野で活躍するアーティスト・クリエイターにインタビューするメディア”SPOTLIGHT INTERVIEW”。本日は、「MIDI改造笙の第一人者」「地下アイドル作曲家」「元歯科医」という異色の経歴を持つ、クリエイターの綺羅空心斎(きらくうしんさい)さんにインタビューさせていただきました!

SPOTLIGHT運営 (以下SL): 綺羅さん、本日はインタビューにご協力いただきありがとうございます。まずは読者の皆様に向かって、今までの活動についてご紹介を頂けますでしょうか。
「地下アイドルへの楽曲提供と、魔改造した電子笙を使ったパフォーマンスをやってます」
綺羅空心斎さん (以下 綺羅): はい。現在は作曲家としての活動が中心です。一般的に作曲家といえば皆さんAKBさんのようなアーティストに楽曲を提供して、レコード会社を通じて音源が販売されるようなお仕事をイメージするかと思いますが、私はいわゆる「地下アイドル」への楽曲提供を中心に活動しております。
加えて、こちらは趣味に近いところではございますが、和楽器の演奏家をしております。雅楽で使う「笙」という楽器を使ったパフォーマンスをしているんですけれども、私はこの笙を電子楽器に魔改造し、自在にライブ演奏できる楽器へと進化させました。
SL: なんか凄そうですね…。無知を恐縮でお伺いするのですが、笙って一体どんな楽器なのでしょうか。
綺羅: 笙とは、いわゆる和風ハーモニカみたいな楽器です。手で持って息を吹き込むと上に伸びた複数の管から音が出る楽器で、千年くらいの歴史があります。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
SL: あ、小学校の音楽の授業で見たことあるかもしれません!
綺羅: それですそれです。笙という楽器は結構デリケートでして、火鉢で温めてから使わないと音が出なかったり、ライブでの取り回しを考えると、少し難があるんですね。ですので、笙にタクトスイッチを配置して、ArduinoっていうマイコンでPCと接続できるようにして、ソフトウェアのシンセサイザーを演奏できるように改造致しました。
SL: Youtubeにアップロードされている動画を拝見したのですが、ターンテーブルやLaunchpadと連携して、かなりアグレッシブな演奏をされてましたよね。非常にかっこよかったです。
綺羅: 今どきの音楽と伝統的な響きを融合させたら面白いかな、と思いながら活動しています。
SL: ちなみに、笙を始めようと思われたきっかけは何だったのでしょうか。
綺羅: そうですね。昔から民族音楽とか和楽器が好きで、興味はあったんですけど、なかなか足を踏み入れる機会がなかったんです。本当に最近、ようやく時間に余裕ができて、楽器を手に入れまして…ついでにMIDI改造もしてみようと…。
SL: あはは。どなたか先生について学ばれたんですか?
綺羅: 実は先生には一切師事していなくて…。
SL: すごいですね! 独学でマスターされたんですか。
綺羅: そもそも教えてくださる先生自体がおらず、神社とかでごくたまに体験教室をやっているくらいで…。なかなかちょっと習いに行くのは厳しいなあ、ということで泣く泣く独学でマスターしました笑。
「”やりたいことを自由にできる環境に自分を置いて、後は身を任せる”ことが一番楽しい」
SL: では、本題の地下アイドルのプロデュースや楽曲提供についてお話いただければと。
綺羅: 元々本業で歯医者さんをやってまして、その歯医者さんの宣伝の一環としてアイドルプロデュースをはじめました。その時は付け八重歯がブームだったので、宣伝のためにTYB48 (付け八重歯48、略して「ティーワイビーフォーティーエイト」) なるグループを結成して、自分で曲を作ってプロデュースをしたのが今の活動につながっています。 その時は自分でイベントのブッキングもして、プロデュースもしていたのですが、現在は楽曲提供のお仕事が中心になっています。
SL: 現在の制作環境はどんな感じなのでしょうか。
綺羅: 基本的には完全にPC+ソフトウェアシンセサイザーで曲を作っていて、Ableton Liveっていうデジタルオーディオワークステーションをメインで使っています。直感的な操作がしやすくて、DJ系の人がよく使っている機材ですね。
SL: Ableton Live いいですよね。プラグイン (編注: ソフトウェアのシンセサイザー)としてはどのような機材をお使いなんでしょうか。
綺羅: 昔は色々有料のプラグインを使っていたんですが、PCの乗り換えの度に使えなくなることが多くて。今はフリー配布されているシンセサイザーをとにかく使い倒してやろう、くらいの意気込みで色々試しています。
SL: ありがとうございます。綺羅さんの経歴を拝見したのですが、慶應義塾大学をご卒業後、一般企業にご就職され、その後歯科大学に入り直して、歯科医として独立、更にそこからアイドルプロデューサーに転身される、というかなりアグレッシブなキャリアを歩んでいらっしゃいますよね。元々音楽で身を立てられるご算段があったのでしょうか。
綺羅: 慶応在学時のころもバンドはやっていたのですが、その時は全然音楽を仕事にしようという思いは全然なく、普通に就職活動して就職しました。ちょうど就職氷河期で希望通りの仕事にはつけなくて、手に職をつけたいな、と思って歯科大学に再入学し、歯医者さんになりました。 勤務医時代に割と時間に余裕がある生活だったので、ビジュアル系バンドをやることになりまして、それが本格的に音楽をはじめたきっかけです。その後独立して、自分の歯科医院の宣伝のためにアイドルプロデュースを始めたのが地下アイドルの仕事に携わったはじまりです。
SL: 結構、いろいろな苦労があったと推察されますが。
綺羅: そうですね。歯医者さん時代は経営面で結構苦労しました。今、歯医者さんってどこにでもあって、コンビニエンスストアよりも多い、と言われるくらいの過当競争です。普通にやっていてはなかなか経営もうまくいかない。付け八重歯という差別化できる強みがあったので、なんとかやっていけましたが、結構苦労しながらやっていました。
あと、今はだいぶ裾野も広がって環境も変わったと思いますが、私がプロデュースをはじめた2014年頃の地下アイドル業界は本当にアングラな世界で。正直、「素人さんがいきなり入ってきて何してるの?」みたいな笑 世間一般の認知なんてほとんど無いに等しい時代だったので、周りの人に「アイドルのプロデュースしてます」って言っても、「事務所とか入ってやってるんですか?」って感じでなかなか自分の仕事をわかってもらいづらい苦しみはありましたね。
SL: 確かに、今でこそ一定の認知を得ていますが、当時だと結構ピンと来ない人が多かったかもしれません。ちなみに、歯医者さんからアイドルプロデュースって、結構ギャップがありますよね。例えばメンバーの女の子探しとか…。
綺羅: 実は、歯医者に来ていた患者さんなんです。
SL: えー! 「君、アイドルやってみない?」みたいな感じですか。
綺羅: 当時は付け八重歯が結構最先端のファッションとして注目されていたので、結構来ている女の子もセンスのいい女の子が多かったんです。それで、お客さんにダイレクトメールをお送りして、メンバーを募りました笑
SL: なるほど。確かに理にかなっていますね。歯医者さんからアイドルプロデュースへ転身されて、現在は作曲家一本でやってらっしゃるということですが、そこに至るには音楽に対する強い思いがあったのですか?
綺羅: そうですね。ライブを見に来て、楽しんでくれるファンの人たちが支えになってまして、「楽しんでもらえて本当によかったなあ」、って思いでやってこれました。あとは、基本的に僕は「やりたい方向に向かうのが一番いい」というポリシーですので、それが自分のキャリア選択の軸になってきた、と思っています。
元々私はサラリーマンを5~6年くらいやって、その間に色々役職もついて、いわゆる一般的なキャリアを積んでいた時期もありました。でも「このまま行っても部長止まりだな」とか、少しずつ先が見えてくる感じもありまして…。
それなら独立して、”自分がやりたいことを自由にできる環境に自分を置いて、後は身を任せる”ことが一番楽しいんじゃないかな? ということで、今の生き方を選択した感じです。 アイドルプロデュースも、自分の友達にアパレルをやっている友達がいて、写真を撮れる友達がいて、ダンスをやっている友達がいて…、それを全部繋げたらアイドルプロデュースができる!みたいな必然なのか偶然なのかわからない流れがあって始まっています。
SL: ありがとうございます。そうすると、綺羅さんの将来に向けたビジョンとか、夢ってどのようなものなのでしょうか。
綺羅: 今は地下アイドル専門家の作曲家として活動していますが、ゆくゆくはメジャーな人たちの曲を書いてみたい、自分の書いた曲が紅白歌合戦とかで歌われるところを見てみたい、という思いがあります。もちろんコンペに通って、というのもありますし、自分が楽曲提供やプロデュースをした女の子たちが成長して、メジャーになる、という形もいいなあと。幸い私は地下専門、という独特なポジションにいるので、逆にそこを差別化のポイントとして、オンリーワンな存在になっていきたいなと思っています。
SL: 自分のプロデュースしたアイドルが紅白に出るって、最高にロマンチックでワクワクしますね…。陰ながら応援しております。最後に、綺羅さんの今後のライブ活動等、告知がございましたら教えて下さい。
綺羅: 11月23日に国際交流と日本文化のmixイベント、「Japanese Lounge Night」に和楽器で参戦します。是非遊びに来てください!
Japanese Lounge Night
日時: 2019年11月23日 (土)
場所: 飯田橋スポーツバーwild pitch
エントランスフリー
SPOTLIGHT INTERVIEW、本日はMIDI改造笙の第一人者/地下アイドル作曲家の綺羅空心斎さんへのインタビューでお送りいたしました。綺羅さん、誠にありがとうございました!
本日お話を伺った方: 綺羅空心斎 (きらくうしんさい) さん

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